加藤志麻さん/ハンス=クリスティアン・シュヴァイカー教授門下

加藤志麻さん/ハンス=クリスティアン・シュヴァイカー教授門下
名古屋市立菊里高等学校を経て、愛知県立芸術大学音楽学部を首席で卒業。桑原賞受賞。
第21回日本クラシック音楽コンクール大学女子の部第4位(1、2位なし)。
愛知県立芸術大学「室内楽の夕べ 」、「愛知県立芸術大学音楽学部 第46回定期演奏会」「卒業演奏会」などに出演。
2014年度青山財団、山田貞夫音楽財団奨学生。
2015年度ドイツ国立ケルン音楽舞踏大学アーヘン校に1年間交換留学。
留学の際に兼松信子基金より奨学金を受給。
平成29年度中村桃子賞受賞。
愛知県立芸術大学大学院音楽研究科博士前期課程 音楽専攻 弦楽器領域を経て、2021年ドイツ国立ケルン音楽舞踏大学Solo-Masterを卒業予定。
これまでにチェロを林良一、三原由美子、高木俊彰、河野文昭、花崎薫、Hans-Christian Schweikerの各氏に師事。
-まず簡単な自己紹介ということで、現在までの略歴を教えてください。留学する前までの音楽の経験は? 何歳からなさっていましたか?

加藤さん:チェロは12歳の時から始めました。
名古屋市立菊里高等学校、愛知県芸術大学を経てドイツ国立ケルン音楽舞踏大学大学院に進学しました。
-留学したきっかけを教えてください。

加藤さん:愛知県芸在学時にケルン音楽大学との1年間交換留学制度があり、当時ドイツで勉強してみたいと思っていたので応募したところ、念願叶って留学出来ることになりました。
1年間だと足りないなと感じていたので、交換留学後にケルン音大の大学院に進学することにしました。
-どうやって現在の学校を選びましたか?現在の学校に決まるまでのいきさつを教えてください。また。決め手になった点はなんでしょうか?

加藤さん:特にこの学校で勉強したい!という希望はなかったのですが、愛知県芸とケルン音楽大学が交換留学の協定校だったのと、Vorspielをした時に私を取って下さると言ってくださった事、また私もこの先生だったら成長できそうだなと感じたことが決め手になりました。
-どのような試験・出願書類が必要でしたか?何か書き方のコツはあるのでしょうか?
また、試験の思い出、苦労話などありましたら、教えてください。
加藤さん:試験は1時間分の実技のプログラムが必要でしたが、実際試験で弾いたのは1次、2次試験合わせても20分くらいではなかったかと思います。
出願書類は特に難しいことはなかったと記憶しています。
試験自体は日本の入試と違ってとても自由な雰囲気で、さぁ弾いてごらん!という感じでしたが、自分がとても緊張していたのでその場は楽しめませんでした(笑)
-手続きで苦労した点はなにかありますか?
加藤さん:日本からドイツへ生活費などの送金をするのに毎回2、3時間かかり、手間取りました。
今は大手の銀行でも海外送金をやめてしまった所もあるので、注意が必要です。
ドイツでの手続きは住民登録、銀行口座開設、健康保険の加入、ビザの申請とやる事が山積みでした。
特に、健康保険は2ヶ月経っても加入証明書が送られてこず、ビザの申請が大幅におくれてしまいました。(健康保険会社に問い合わせた所、加入されていなかった事が発覚しました。)
-留学準備はどのくらい前から始めましたか?

加藤さん:交換留学の時は半年前くらいから、大学院進学の時は1年前ほどから準備していました。
-学費はどう捻出しましたか?

加藤さん:学費自体は無料なので、お金はかかっていませんが、生活費、交通費などは交換留学時に貰っていた奨学金と後は両親からの援助でした。
-語学は日本でどのくらい勉強しましたか?現地でも語学学校に行った方がいいでしょうか?

加藤さん:大学の時4年間ドイツ語の授業を取っていましたが、話す•聞く事が全く出来なかったので、現地で語学学校に通いました。
ドイツ語でドイツ語を習うのは最初は訳が分からず、どうしようかと思いましたが、段々慣れていきました。
色々な国の友達もできるので、私は現地でも語学学校に行くことをお勧めします。
-学校はどんな雰囲気ですか?その学校ならではの特徴は何かありますか?

加藤さん:とても自由な雰囲気で、自分が思ったこと、考えていること、分からない事を素直に発言する人が多かったです。
また先生も生徒が知らない事を、こんな事も知らないの?と言ったりせず分かるまで教えていらっしゃった事がとても印象的でした。
-日本人はどのくらいいますか?

加藤さん:ケルン音楽大学は3つ校舎があり、私はアーヘン校に通っていました。
アーヘンでは日本人は6人程いましたが、ケルンの本校はもっといると思います。
-日本と留学先で大きく違う点を教えてください

加藤さん:自分の考えていることを素直に先生に聞けること、私がどうしたら思うように弾けるか一緒に考えてくださることです。
-学校の授業はどのように進められますか?日本でしっかりやっておいたほうがいい勉強などありましたら、教えてください。

加藤さん:私は大学院でしたので、講義系の授業を取るかどうかは自由だったのですが、やはり円滑にコミニュケーションが取れるとストレスも少なくなると思います。
ドイツ語の会話のレッスンなど、通えるなら行ってみて、ドイツ人と会話することに慣れておいた方がいいと思います。
-先生はどうやって探しましたか?

加藤さん:愛知県芸の時、師事していた先生のご紹介です。
-日ごろ練習はどのようにしていますか?

加藤さん:アーヘン校では、滅多に練習室がいっぱいになることはないので、毎日学校で好きなだけ練習しています。
ケルンの本校では週何時間と練習室を予約できる時間が決まっていて、インターネットで部屋を予約するシステムです。
-学外でのセッション、コンサートなどは行われますか?

加藤さん:コロナの前は沢山のコンサートが行われていました。
学内のコンクールなどに出るなどして、他の先生方から認知されると、今度こんな演奏会に出てみない?と色々な演奏会に出させて頂けました。
-1日の大体のスケジュールを教えてください

加藤さん:午前中 2時間程練習、図書館へ行く
午後 2、3時間練習、レッスンがあればレッスンへ。
夕方からクラスの弾き合い会があれば行く
オーケストラなどがあった時は朝、夜に3時間ずつ程、2週間程度練習がありました。
-現地の音楽業界へのツテはできますか?

加藤さん:自分でProbespielをするなり、音楽教室で働くなどしないとツテはなかなか出来ないです。
私は日本に帰国するつもりでしたので、今の所、現地音楽界へのツテはありません。
-周囲の人の学習態度に関しては、日本とどう違いますか?例えばどのような点が違うと思いますか?(例:欧米だと、生徒と先生が対等で意見を交換し合うので、積極氏が重視されるなどがあります)

加藤さん:先生の言うことを黙ってきいている人は少ないように感じました。
こんな事も知らないのかと言われるのではないかと思う様なことも、自分が分からない、納得できないと感じれば質問する姿勢に驚きました。
ただ、日本のレッスンのように言われた事に頷くだけだと自分の意見が言えないとみなされて怒ってしまう先生もいらっしゃるようで、習慣を変えるのは難しいなと感じました。
-授業以外はどのように過ごされていますか?

加藤さん:語学学校に通っていたときは午前中は語学学校に行っていました。
コロナ前は皆でご飯を食べに行ったり、家で料理を作ったりしてワイワイと過ごしていたのですが、ロックダウンになってしまってからは学校でたまたま会った友人と話すか、ほとんど一人で散歩などしていました。
-日本人以外の人たちと付き合うコツはありますか?

加藤さん:ドイツ語が分からなかったら早めにそれ、どういう意味?と聞くことです。
以前、分からないことが恥ずかしくて聞けなかった時に適当に相槌を打っていたらとんでもない勘違いをされた事がありました(笑)
-宿泊先はどのようにみつけましたか?

加藤さん:初めは現地にいた友達に見つけてもらいましたが、とても狭かったので半年後に転居した友達の部屋を引き継ぎました。
-生活費はだいたい1か月いくらぐらいかかりますか?

加藤さん:私の場合は家賃が安いので、750€程で生活できました。
-留学してよかったと思える瞬間は?

加藤さん:もっと自由に演奏していいんだと思えた事、音楽は楽しいものなんだと思えた事です。
-留学して自分が変わった、成長したというところはありますか?例えことですか?

加藤さん:失敗しても何でもいいから取り敢えずやってみるという精神です。
ヨーロッパの人達のネバーギブアップの精神には及びませんが、日本にいた時より少しはやってみようと思える事が増えたことです。
-今後はどのような進路を考えていますか?

加藤さん:教えたり、オーケストラや様々な室内楽など幅広く活動したいです。
-これから留学する人が、心しておかなければいけない点、アドバイスしておきたいことがありましたら、お願いします。

加藤さん:案ずるより産むがやすしという諺があるように、ヨーロッパでは割とダメ元でやってみたら何とかなったと言うことが多いです。(もちろん逆もありますが…)
様々な不安はあると思いますが、取り敢えず飛び出してみると雰囲気もわかると思います。
コロナがもう少し落ち着いたら、興味のある方はぜひ一度日本を出てみてください。
-ハンス=クリスティアン・シュヴァイカー先生の特徴を教えていただけますか?

加藤さん:シュヴァイカー先生のレッスンはまずよく自分の音を聴く、楽器が本当に鳴っているかを体と耳に教えこむレッスンから始まります。
また、曲の解釈なども例え話を使って非常にイメージしやすく教えてくださいます。
肩が痛い、指が痛い事の解決方法も沢山ご存知の先生です。
ご協力いただきありがとうございました。
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