-簡単な自己紹介ということで、音楽歴などを教えて頂けますでしょうか。
平井裕子 音大ではなく、明治大学の文学部を卒業しまして、卒業してすぐ10年間会社員をしていました。結婚で辞めまして、それから正式に声楽の方を勉強し始めました。それがちょうど10年前になりますね。2004年の4月から勉強を始めて、2006年に専門学校の尚美のディプロマコースという所に入りまして2009年に修了。2011年に洗足学園音楽大学大学院に入学し、昨年の3月卒業しました。
-大学院まで随分長く学ばれたということですね。
平井裕子 そうですね。10年間勉強したうちの5年間はディプロマコース3年と大学院2年、学生として過ごしました。ただ、ディプロマに入学した頃から演奏活動は少しずつしておりました。
-今の活動も教えて頂いてよろしいでしょうか?
平井裕子 声楽を勉強し直したて2年後から、フランス歌曲や近代フランス音楽がご専門の中村浩子先生に師事しまして、現在もフランス近代歌曲とフランスオペラを専攻しています。
-これまでに講習会等は参加したことはございますでしょうか?
平井裕子 ないです。
-では、今回が初めてということですね?
平井裕子 はい、そうです。
-海外にはご旅行とかで行かれたことはありますか?
平井裕子 はい、あります。
-どちらに行かれたことがありますか?
平井裕子 ヨーロッパは今回初めてです。15回ぐらい渡航はしています。アメリカ、カナダ、シンガポール、マレーシア、タイ、中国に返還される前の香港、モルディブ、韓国が5回で一番多いですね。
-今回、この講習会に行きたいと思った理由やキッカケは何だったんでしょうか?
平井裕子 大学院を卒業して、本格的な演奏活動を始めました。フランス歌曲とかオペラを専攻しているということで、やっぱりフランス人の方に習ってみたいというのがありまして。単発的なマスタークラスみたいなもの、中村浩子先生門下で毎年エコールノルマルの先生をお呼びしているので、そちらの先生とかのマスタークラスとか、コンセール・Cというのが中村先生門下の音楽団体なんですけれども、そちらの先輩でニースで教えていたり、フランスの音楽院で教えてる方がいらっしゃるので、そういう方が帰ってきた時に習ったりということが勿論できたんですけど、日本人だったりとか年に1回という限られた時間なので、少し集中してと学んでみたいと思いまして。
-現地の方が雰囲気も味わうことができるので。
平井裕子 そうですね。
-講習会の参加者は、どのぐらいの方がいらっしゃいましたでしょうか?
平井裕子 これはクラスということで宜しいですか?
-全体の人数はなかなか把握できないですよね。クラスの人数は?
平井裕子 私はアントワンヌ・パロック先生というコレペティートルの先生の2期を受けました。パロック先生は2期、3期にクラスがあります。2期は私ともう1人だけでした。
-それでは2名で。結構、集中的にレッスン出来たということですね?
平井裕子 はい。
-もう1名の方は日本人の方ですか?
平井裕子 日本人の方です。
-結構、集中したスケジュールだったかと思うんですけど、どういったスケジュールで進行していったんでしょうか?
平井裕子 まず、火曜日に最初のガイダンスみたいな形なんですけども、2人しかいないということで、いきなりその日からレッスンということで。同じパロック先生のクラスに第3期で参加したピアニストの友人がいるんですけど、その方が昨年、一昨年とパロック先生のクラスをフランスで受講されていたようで、ご紹介して下さって。去年4月と今年4月に、先生が東京に来日された時に、そのピアニストの友人の紹介でレッスンを受けました。そのため、先生との面識はあったのです。2期のクラスが2名と分かったのがあとからなんですけど、ガイダンスに私しか来ていなかったので「もしかして私だけなのかな?」と思って。先生と1週間のスケジュールなどを決めました。
-先生が決める感じ?
平井裕子 そうです。火曜日から毎日11時半からレッスン。火、水、木、金、土、日と6日間連続でした。
-土日も?
平井裕子 はい。
-じゃあ、結構忙しいスケジュールという感じなんですね?
平井裕子 そうですね。2人しかいないので、毎日同じ時間に固定でして頂けたので。
-じゃあ、その後は結構自由に時間を使うことが出来たという感じですかね?
平井裕子 はい。大体、私は寮で朝食を取ってから、朝9時半から10時の間に学校へ行って声出しを兼ねて練習をしていました。11時半から45分レッスンと言いながら、キリの良い所までということで、気が付くと1時間ぐらいということがありました。次の方が12時半からレッスンで、次の方の聴講をして昼食です。
-聴講もされて?
平井裕子 そうです。2人しかいないので交互にという感じで。聴講が終わっても1時半ぐらい、ランチが2時ぐらいまでなので、そのままお昼を食べて、あとは自分の練習をしたりとか、ダルトン・ボールドウィン先生のクラスを聴講しに行ったりとか。結構、聴講が自由な講習会でした。他に、学校でツアーみたいなものを組んでくれていて。そうしたツアーがあることは、現地でわかったのですが、そのツアーに参加したりなんていうこともしてました。例えば、美術館に連れて行ってくれたりとか、マーケット、マルシェに案内とか。確か、水曜日と木曜日か木曜日と金曜日か忘れましたけど、2日連続で美術館のツア
ーというのがあったのでそちらに参加しました。
-現地で自主的に申し込んで行くような感じ?
平井裕子 そうです。講習会でアクティビティのスケジュール表みたいなのを配っていて、時間とスケジュールが組まれてるので、その時間にロビーに行けば連れて行ってもらえるということで。別に有料とかではなく、交通費とか入館料、そういうものは実費なんですけど、現地まで連れて行ってくれました。
-楽しそうですね、結構いろんなことが出来たという事ですね。
平井裕子 はい。時間も決まっていたので、凄く規則正しい生活を送れましたね。
-今までに先生のレッスンを2回ほど受けられているということなんですけども、どういった方なんでしょうか?
平井裕子 日本でコレペティートルという職業はあまり認知されていないと思うんですけれど、向こうですと歌劇場に専属だったりとか、歌曲についても、歌手について音楽指導するという職業がピアニストかコレペティだと思うんです。歌手に歌わせないといけないので、凄く気分を乗せて下さる方で。東京で2回レッスンを受けた時も思いましたが、非常に表現方法とかも自由で。但し、発音に対してはフランス人なので非常に厳しいんですが。フランス音楽をやる上では、やっぱりフランス人の解釈とかそういう点を勉強したかったので、凄く乗せてくれて歌わせていただけるというのと、良い所を見つけてくれて伸ばして褒めてくれるという先生ですね。
-職業ならではのレッスンをされるということですね?
平井裕子 そうですね。
-今回のレッスンでは、どのようなことを具体的に教わりましたでしょうか?
平井裕子 歌の先生ではないので、もうある程度勉強してある曲を見せて音楽表現とか発音とかを見て頂くつもりでいたんです。「発音をもっと注意されるかな?」と思っていたら、4月に東京で見て頂いた時は酷かったらしいんですけど(笑) その後日本で、フランス人の方にフランス語を習ったりもしているせいか「凄くすごく良くなった」と仰って、あまりそこら辺は注意されなかったので、ちょっと予定が狂いました(笑)
-凄く日本で努力されて、そこがちゃんと伸びていたんですね。
平井裕子 そうなんでしょうか(笑)それなら、音楽表現、フランス人ならではのものを学ぼうと思いまして。先生がコレペティートルなので、最初の2日間はピアノを弾きながらレッスンをして下さってたんですけど、3日目からもう1人女性のピアニストが来て、専属の伴奏という形だったので、先生は自由に表現とかそういう物を、写真で送った内容なんですけど、立って指導をして下さったので、後半4日間は贅沢にピアニスト2人に指導を受けることに。当然、伴奏している女性のピアニストも気付いたことがあれば言って下さるので、凄く深く学べました。
-充実した感じだったんですね?
平井裕子 そうですね。
-確かに、あの写真の中に女性の方が弾いてて、先生が凄く動いてる写真が写ってたので。
平井裕子 そうですね。あの写真は5日目ぐらいなので。最初の2日間は先生だけでしたね。
-先生が弾いて下さってという事だったんですね。何か印象に残っていることとかありますでしょうか?
平井裕子 東京にいらした時のレッスンでもパロック先生にずっと言われてたんですけど、特に「裕子は凄く表現が固い」「真面目過ぎる」というのを言われました。多分私だけではなく、日本人の声楽家が特にフランス歌曲を歌おうとすると、「お行儀よくしなくちゃ」という印象がたぶんあると思うんですけれど、そういうものではなく、イタリアものとはまた全然違うんですけど、もっとアパッショナートなものというか、そういうものなんだなというのを過去2回のレッスンもそう思ったんです。現地に行ってみてそういう空気を感じると、「やっぱりそうなんだな」というのが。
-やっぱり現地で教わると、そういった雰囲気とかも分かるということですね?
平井裕子 そうですね。よく分かりますね。
-今回は通訳を付けられていたんですけど、レッスンは先生は何語でお話されてましたか?
平井裕子 通訳がいると分かるとフランス語ですね。私は英語はそこそこ大丈夫なので、先生も英語を話されるので、東京に来た時は英語でレッスンして頂いてたんですけど。結果的には「通訳の方がいなくても英語で大丈夫だったかな」とは思うんですけど、やっぱりどちらかと言ったら、細かい所とか聞き逃したくなかったというのと、レッスンしていただくことに集中したい気持ちがあって。たぶん先生もフランス人なので、どっちかと言ったらフランス語の方がきっといいはずなので、いて頂いて良かったと思います。
-練習はどちらでされたんでしょうか?
平井裕子
講習会に参加する人は、必ず練習室を割り当ててもらえるんですが、私は日本人の歌の方(別のクラス)と同じ部屋で、たぶん2人しか使っていない部屋を割り当てられました。その方と寮も部屋が隣だったので、話し合って自由にシェアして。でも、実際はその割り当てられた部屋じゃなくても、空いていれば大丈夫という感じで。その点は、日本の音大も割とそういう所あるんですけど、それは同じかなあという印象です。
-結構、練習の量は出来たという感じですね?
平井裕子 そうですね。学生寮でも一応時間が決められてるんですけど、その間なら練習が出来るので。例えば「今日は疲れちゃったなあ」と思う時は、早めに聴講とかしないで帰って寮で歌ってから晩御飯みたいな。そのままずっと寮に居てという時も。
-リラックスしながら練習できるということですね?
平井裕子 そうですね。
-練習室にクーラーとかは付いていましたでしょうか?
平井裕子 なかったですけど、たまたま行った時期が良かったのかも知れないんですが、私は割と暑がりなんですけど、あまり気にならなくて大丈夫でした。
-結構クーラーついてないお部屋もあって、暑いということを聞いていたので。
平井裕子 私もそういう話を聞いていたので、「どうなのかな?」と思っていましたけど、あまり気にならなかったです。
-結構、気候が涼しめだったんですかね?
平井裕子 7月はそうですね。8月、第3期、第4期は暑いのかもしれないですが。でも日本、特に東京のようにアスファルトの照り返しや湿気が無いので。
-レッスン以外の時間はアクティビティとかも参加されていたと思うんですけども、他には何をされましたでしょうか?
平井裕子 練習をしたりとか、間に合えばレッスンで見て頂こうと思っていた所を譜読みをしたりとか。結局的に間に合わなかったんで出さなかったんですけど。あとは寮なので、洗濯を普通にしていたりとか。割とのんびりと過ごしていて、寮はテレビとかも全然なくてやることがないので。だから逆に凄く良くて、勉強するしかないのでという感じで。あとは、ちょっと買い物に行ったりとかそんな感じですね。
-ニースの海岸沿いとかには行かれましたか?
平井裕子 行ってないです。
-街の方にお出かけされた時は、様子は如何でしたでしょうか?
平井裕子 普段はスーパーに買い物に行ったりとかぐらいです。最終日の日曜日にあるスチューデント・コンサートというのには、実際は、出る先生のクラスというのも決まっている感じで。うちのクラスは2人しかいないというのも多分あるんですけど、パロック先生クラスは多分、人数に関係なくスチューデント・コンサートは無くて。講習会の期間中ずっとニース音楽祭なんですけど、パロック先生が音楽祭に出られたんですね。新人の若手のソプラノの方と。ちょっと離れた所なんですけど、グラースという街で、レッスン最終日8月3日の日曜日、夜8時半からのコンサートでした。大体、車でニースの街から1時間ぐらいの所なんですけど、そこに行ってきました。
-結構、遅い時間ですよね?
平井裕子 はい。ニースの街から車で1時間掛かるので結構遠いですよね。東京みたいに道が混んでないですから進んじゃうので、それで1時間ぐらいです。
-移動はどうされたんですか?
平井裕子 先生が招待してくださったので、先生が「自分のマイボスが連れて行ってくれるから」と。たぶんお願いしてくださったみたいです。
学校の事務長さんのような方で、スチューデント・コンサートの司会をやっていた方なんですけど、「このままみんなが出るスチューデント・コンサートを聴いて、そのまま彼に話しかけて、裕子と一緒のクラスのもう1人の名前を伝えて連れてきてもらって」と言われたので。その会話は英語なんですけど。
-そうですよね。そうやって日常会話も発生しますよね。
平井裕子 連れて行ってもらって、帰りは、もう1人の生徒の方はホテルに泊まっていらしたのですが、先生が「どこまで行く?」みたいなのを観客で来ていたご家族やお友達に聞いて下さって。パルローズとかシミエとか寮のある辺りとかホテルのある辺りまで行く人を探してくださって、結局、先生のご友人ご夫妻が送ってくださいました。
-その場で初めて会った方に乗せて頂いて。
平井裕子 そうです。先生が「この2人の日本人をホテルと寮まで送って行ってさしあげて」みたいな感じで、お願いしてくださったんです。
-先生も凄くいろんなお手配をして下さって。
平井裕子 はい。そのことでも分かると思うんですけど、そういう人柄の方で。
-凄い人情があるというか。
平井裕子 そうですよね。
-確かに、1時間で道がガラガラだと凄く遠いですよね?
平井裕子 そうなんです。先生がコンサートに誘ってくださったのが、何日目かのレッスンの終わりで「興味ありますか?」と言われて、「はい」と言ったら、通訳の方が「凄く遠いよ」と教えてくれて。でも、先生が「車の手配が出来るかどうか聞いてみますから」というのをフランス語で仰ったみたいで通訳してくれて。そしたら、翌日にはもう連れて行って下さる方が決まっていたのです。
-速いですね。でも、またコンサートに出るのとは違う経験が。
平井裕子 そうですね。かえってその方が良かったなというか。
-実際に先生が演奏されている所を。
平井裕子 パリのコンセルバトワールを出たばかりのソプラノの方が歌われたので、その方はベルギー人みたいなんですけど、でもやっぱりフランス人が、フランス語を話す人たちが演奏するフランス音楽というものをちゃんと聴けたので、凄く刺激になったというのか、当たり前ですが、日本人、自分たちとは全然違うなと。
-現地ならではですよね?
平井裕子 そうですね。凄く良かったです。だから、街は通過するぐらいで、一気に遠い所まで連れて行かれてしまったので(笑)
-空いている時間にどこか遊びに行ったりとかはされましたでしょうか?
平井裕子 アクティビティには夜の海に行くとかマルシェを見に行くとか、旧市街地とかを見に行くとかいろいろあったんですけど。私はマティス美術館とシャガール美術館鑑賞というのにしか参加しなかったので、あとは街をぶらぶらというぐらいで。
-お買い物という感じですね?
平井裕子 はい。
-宿泊先は今回はどこに泊まりましたか?
平井裕子 モンテベッロ(寮)ですね。
-前泊と後泊は?
平井裕子 ホテルです。
-ホテルとかの対応とかはどうでしたでしょうか?
平井裕子 前泊と後泊のホテルを試しで変えてみたんです。前泊のホテルは三ツ星で、ニースの街中からさらにちょっと離れたコンベンションセンターみたいなビジネス街みたいな所があるんですけど、そこにあったホテルだったので、凄く静かで良かったですね。ただ、1点だけちょっとビックリだったのが、日本に帰って来てからフランス人の先生に聞いてみたら、「たぶんこういう事じゃないか」と言われたんですけど…割と新しかったんですけど、リニューアルをしたばかりみたいで、エレベーターがなぜか例えば2階と3階の間とかで止まる。エレベーターだけリニューアル前そのままというか(笑)ちゃんと書いてあって、2分の3とか3分の4とかなので。向こうでは荷物は自分で持つじゃないですか。だから、半階分は持って上がるか下りるかをしないといけなかったので(笑)着いてやれやれ、ゆっくりしようと思ったところへいきなりカルチャーショックでした(笑)
-中途半端なとこにエレベーターが止まるように設定されている?
平井裕子 そうです。普通1,2,3と書いてあるんですけど、そうじゃなくて1分の2、2分の3となってて「なんでだろう?」と思って。確か部屋が3階だったので、2分の3で下りて上がるか、3分の4で下りるかしかなかったので、ちょっと戸惑ってビックリしたんですけど。あと、手動のドアだったので初めてだったのでちょっとビックリ。それ以外は、静かな所で凄く綺麗で良かったですね。後泊したホテルは、アンドビジョンから行った方はノルマンディホテルとかに泊まっていたんですけど、そのノルマンディホテルのすぐ目の前なんですね。だから、街中なんですけど、二ツ星で最初に三ツ星を見てしまっているので、「こんな感じかな」と。あと、どっちのホテルもそうなんですけど、カードキーじゃないですか。でも、カードキーでも日本の場合、内鍵も更に掛かりますよね。どちらのホテルも内鍵は掛からなかったですね。
-勝手に締めたらオートロックのような形?
平井裕子 そうですね。多分、これはきっと感覚の違いなんだと思うんですけど、その点も日本でフランス語を習っているフランス人の先生に言ったら「別に大丈夫では」と言ってたんで。でも、付いているのに閉まらないというのはちょっと不安だし、日本のホテルでもカードキーだけど内鍵かチェーンがありますよね。チェーンは勿論ないし、あるんですけど途中までしかいかないみたいな。でも、「そういうもんなんだなあ」と思うしかなく。朝食はやっぱり二ツ星と三ツ星だとやっぱり内容が全然違いましたね。
-宿泊先と講習会場はどのように移動されましたでしょうか?
平井裕子 歩いて行ったりとか、あとはバスですね。
-バスはどれぐらいの乗車時間ですか?
平井裕子 10分~15分ぐらいですかね。歩くと20分ぐらい。ただ、モンテペッロのすぐ近くにバス停がある訳ではないので、バス停まで7~8分歩かないといけないので。でもバスだと坂を上るのが楽なので。
-キツイ時はバスに乗っちゃえばという感じですね?
平井裕子 そうですね。帰りも上手くバスが来れば乗ったりとか、帰りは学校の近くにもスーパーがあるので、そこを通って買い物をしてのんびり歩いて帰ったりとかいろいろしてました。
-ご飯は何を召し上がりましたか?
平井裕子 実際は、寮で出されてる朝食と夕食と、あと学校で出る昼ご飯だけで。オヤツ的なものをスーパーで買ってきて食べたり。着いた日はちょっとやっぱり疲れたので、食事もせず時差ボケを治す為に寝てしまいました。最終日の後泊したホテルも「みんなで街出ようか」と出た方もいるんですけど、ちょっと面倒臭くなったのと、あと街中が治安が悪いわけではないんですけど、モンテペッロの辺りとか学校のある市民地区とは全然雰囲気が違うので、ちょっと緊張するので「いいかな」という感じで。スーパーで買ってきて食べちゃったりとかいう風にしてましたね。
-食事が3食付いているので、特に自分で召し上がるということは無かったんですね?
平井裕子 はい、特になかったです。あとはスーパーで買ってきたものぐらいですね。
-海外の参加者の方とかもいらっしゃったかと思うんですけど、先生も含め上手く付き合うコツとかはありますでしょうか?
平井裕子 やっぱり下手でもいいと思うので、本当は良くないんだと思うんですけれど、本当はフランス語の方が絶対いいと思うんですが、
でも基本、講習会にはいろんな国の方が来ているので、フランス語がメインということは決してないので、英語はブロークンでもいいので絶対できた方がいいと思います。
-やっぱり英語が中心でコミュニケーションを取るという形ですね?
平井裕子 はい、そうですね。下手でも伝えようとすれば、ちゃんと向こうも分かってくれるので。
-伝えることを頑張るということですね?
平井裕子 はい、そうですね。
-今回、留学中に何か困ったことはありましたでしょうか?
平井裕子 2つありまして、1つが電話なんですけど。G-CALLを借りて行ったんですけど、最初掛け方が良くわからなくて、通訳さんとかに掛けたりとかというのはあったんですけど。
お互い借りた同士がどういう掛け方をするかとか。41なのか31なのか+を押すのかとか押さないのかとか、結構それで分かるようになるまでに少し時間が掛かったのが1つと。でも、みんな何人かいたのでちょっとやりあって「こうかな?」とか。それと、学生寮に入る手続きとかを通訳の方が一緒にして下さるんですけど、アンドビジョンさんの資料にあるんですけど、去年からなのか今年からなのか、1週間ないって聞いていたクリーニングがあるんですよ。「どうしますか?」というのを聞かれたんで、やっぱり入られたくないから一応私を含め、みんなアンディビジョンから行った第2期の方は断ったんですね。でも、実際は上手く伝わってなくて、入られちゃっていまして。それは、あとで分かったんですけど、私は全然大丈夫だったんですが、他の方の部屋とかが、ちょっと荒らされたりという事がありまして。お菓子とか出して置いてた物がちょっと減っていたかなあみたいな事とか。あと、冷蔵庫が寮の各部屋にちゃんとあるので、そういう所はホテルより恵まれているので、そこに最初の方に、みんなで買い物に行って、水とかをいっぱい入れて置いたんですけど、そのペットボトルが飲まれてはいないみたいなんですけど、凹まされていたりとかがあったので、「入らないで下さい」みたいなことを通訳さんが学校の事務に言って下さったんですけど、それでも伝わらなくて。結局、2期の終わりぐらいに、日本語と中国語と英語とフランス語の張り紙が出てきて、今更なんですが(笑)
フロアによって例えば1階と2階は例えば月・水・金とか、3階と4階は火・木・土とか、なんかそういう張り紙がたぶん金曜日ぐらいに張られているのを見て。それは、通訳さんが皆さんの話しを伝えて下さって、それを受けての事だと思うんですけど。なので、クリーニングはあるということで。
結局断ろうといってもそうやって伝わらないので、英語がちょっと出来るような人がメモで紙にドアの所に「もう入らないで」「不要です」といって、ゴミだけは持って行って欲しいので、ゴミ袋だけを出しておくみたいな事にしたりとか。「クリーニング断る人はゴミを出して置いて下さいと言っていました」と、通訳さんが学校に文句を言って下さった時に、その通りやってたのにそれでもやっぱり入られてたりとか。私の隣の部屋は両脇が歌の方で、1人は日本人で、もう1人がアメリカ人でパリで勉強されている方だったんです。たまたまそのアメリカ人の子が私達は早く学校に行っちゃって、彼女が遅く行った日があるみたいで、「クリーニング断ったんだよね?」という話をしてきて、「でも、裕子の部屋に入って行くのを見たよ」と言われて。
その隣の日本人がSさんと言うんですけど、「裕子とSの部屋に入って行ったよ」とかって言われて、その日早く帰ってみたらやっぱり掃除されていて。
実際、お掃除をする人というのは、フランス人っぽい人ではなかったので、私も見かけたんですけど、アメリカ人の子も「言葉ができないっぽい」とかと言っていました。だから、なかなかやっぱり伝わらないもんなんだなって思いました。
-そういったちょっと細かい所が伝わらなかったということですね?今後の参考にさせて頂きます。
平井裕子 はい。でも、通訳の方がいて下さって凄く助かりました。
-では、今回講習会に参加して良かったと思える瞬間はありましたでしょうか?
平井裕子 凄く楽しくて、規則正しい生活が出来たのと、何も逆に娯楽がないので勉強するしかないということと。
普段、主婦もしているので、食事の心配とかも全然しなくて、自分のやることに集中出来るじゃないですか。そこに行けば出てくるので、だから凄く良かったなと思います。
-今回の留学を通して、何かご自分が変わられたとか成長されたという事はありますでしょうか?
平井裕子 当たり前のことなんですけど、フランス音楽を勉強するんだったら本場で、じゃないですけど、事情が許すんだったら、そういう機会は絶対持った方がいいんだなということですね。
正直、秋から冬の予定とかが無ければ、本番とか仕事とかが入ってなければ、帰ってくるのはちょっと延ばそうかなという感じだったので。
-ちょっと慣れてきて馴染んでくると、どうしても帰りたくなくなっちゃいますもんね。
平井裕子 そうですね。もうちょっといたら、もっと嫌な事とかも出てくるのかも知れないですけど、10日ぐらいだと良い所しか見えないのかもしれない。
前後しちゃうんですけど、困ったことで私ではないんですけど、実は第3期に聞いてらっしゃるかもしれないんですけど、食中毒があったって聞きました?
-はい、聞きました。
平井裕子 向こうで知り合った方とかが、あとでFacebookとかで「みんな具合が悪かった」とか言って。
-2期は全然大丈夫でしたか?
平井裕子 はい、2期は大丈夫でした。
-その後なんですね。
平井裕子 私は帰ってきたのが、日本時間の水曜日なので、水曜日に向こうではそうだったみたいで。
-熱出たりとかお腹痛くなったりとかですか?
平井裕子 熱が39度ぐらい出た方とか、あと嘔吐を何回もとか。でも、寮にドクターが来たと言っていた方もいるので。
でも実際は、診察してもらって薬を出してもらって、聞いた話なので、確認された方がいいかもしれないです。でも、それで終わりだったみたいな。
実際は、どうも寮の食事の方じゃなくて学校のランチの方だったみたいで。水曜日に時間差でバタバタとみんな具合が悪くなったみたいです。
-じゃあ、みなさんそうなったっていう感じ?
平井裕子 そうみたいです。アンドビジョンから行った方じゃないんですが、私が知り合った2人の日本人が言ってたので。
でも、普通は日本だったら、残りの講習会期間中とか、せめて3期の間は営業停止とかになると思うんですけど営業し続けていたらしいです。誰も食べてなかったけどみたいな。
-伝えておきます。日本と留学先フランスで大きく違う点というのは何かありましたでしょうか?
平井裕子 例えばいろいろあるんですけれど、学校の施設とかそういったものとかというのは、勿論日本の方が全然恵まれているとか、日本の方がいい事とか沢山あるんですが、基本自分で何とかしようという風に思わないと、ちょっと向こうではなかなか難しいかなということですね。言葉もそうなんですけど、私は年齢がいっているからそう思うのかもしれないですけど、講習会は若い方が基本参加するじゃないですか。今の大学生とかだと、小学校ぐらいから英語とかを勉強してる世代じゃないかと思うんですけど、でも全然できなくて「助けてください」とか言われて。この下手くそな私の英語でもいいのかというぐらいなんですけど(笑)でも、そんな大したことを言っているわけではむしろ全然ないので、やっぱりそういう事はホントに中学生レベルの英語で全然大丈夫なので、分かろうとして下さるので、何かそうやってトラブル、さっきのクリーニングの話とか食中毒もそうだと思うんですけど、何かあった時にちょっと聞けるとか、そういうことが出来るためには、自分からもうちょっと積極的にという方がいいと思うので。多分これは、どこの国でも一緒かな。
-日本は結構、相手がしてくれたりが多いですもんね。
平井裕子 そうですね、でも、逆に「やらないで」と言ってもそれだけされたりするぐらいなので、何回も言い続けるしかないということになるので。
-主張が大事ということですね?
平井裕子 そうですね。
-今後、留学を考えている方にアドバイスを頂きたいんですけれども。
平井裕子 やはり語学だと思います。英語とかで簡単な例えばセンテンスとか言い回しとかをノートに書いて来ている人とかもいて、「これはいいな」と思ったんですけど。それを見せるとかでもいいと思いますし。たぶん楽器にもよると思うんですよ。歌だとどうしてもその言葉を歌ってるので、ある程度出来ないと表現とかがちょっとレッスン受けられないんですけど。やっぱり楽器だと、もしかしたら語学が出来なくても、例えばピアノだと弾いてもらっちゃったりとかあるじゃないですか。それで、もしかしたら覚えないのかも知れないんですけど、語学の勉強の時間を楽器の練習していた方がいいと思うのかもしれませんし。でもレッスン以外の所で必要な場面が多分絶対出てくると思うので、メモとかでもいいので何か作って行くとか、語学は出来た方が絶対いいと思います。
-留学前にしっかりやっておいた方がいい事は、何かありますでしょうか?
平井裕子 語学と演奏のテクニックなどは勿論なんですけど、「自分の音楽はこういうものなんだ」みたいな「こういう風に解釈したんですけど、どうですか?」みたいなぶつけ方をしないと、向こうの先生にレッスンを受けても勿体ないんじゃないかなというのは凄く思いました。
-じゃあ、漠然と行くんではなくて、自分のビジョンみたいなものを持ってから行った方がいいという事ですね?
平井裕子 そうですね。ある程度きちんと自分の音楽を作って行った方が勿論いいと思います。
-学ぶことが多いというこですね。
平井裕子 はい。
-今後の活動について、お聞かせ頂けますでしょうか?
平井裕子 5月にリサイタルをしたんですけれども、そのサブというか曲目とかはちょっと変えてしまってますが、出身地の千葉県の方で10月にサロンコンサートがあります。また、12月に日仏の共同制作という形で新作音楽劇に出ます。題材は、ピエール・コルネイユという人が書いたル・シッドという作品が元になっているんですけれども、そちらを日本人とフランス人の方が脚色して台本を変えてくださり、日本人の作曲家が書き下ろした音楽をつけた音楽劇です。
-素晴らしいですね。
平井裕子 今回、10月の曲とかでフランスものを見て頂いたという感じですね。
-では、更に磨きがかかって。
平井裕子 だといいんですけど。でもやっぱり、また行く機会もあるかもしれないし、パロック先生もまた春にいらっしゃると仰っていたので、今度は英語じゃなくて、講習会に間に合うようにと思ってフランス語を勉強し出したんですけど、この音楽劇のお話しをいただいて、今こっちの特訓をフランス人に受けてる状態なので。12月の新作音楽劇が終わったら、日常会話を勉強して、次に先生に会う時にはフランス語でレッスン受けたり、会話が出来るようにと思っているんですけど。
-言葉の意味合いとかが分かると、また変わってきますよね?
平井裕子 そうですね。たまたまなんですけど、ほんと余談なんですけど、ある曲を見て頂いたんですけど、でも先生が知らない曲で。日本人はよく歌うけどといった曲で、先生が「知らないけど」と言って、もう1人のピアニストが来る前だったので、先生が弾きながら「キッチな曲だね」ということをフランス語で言っていて、「キッチ」って何だと思って。そしたら通訳の方が、「キッチってそのまま日本語にもなっているよ」って言って。「キッチュ」っていう言葉なんですけど、「キッチュ」とか「キッチ」とかを辞書で引くと、「悪趣味」とか出てくるんです(笑)でも、先生は「悪趣味な曲だね」と言ったわけではなくて、フランス語で適当な言葉がなかったから。私も実は、割と自分はそんなに好きじゃないんだけど、みんなが歌って欲しいと言うからプログラムに入れたみたいな曲で、先生には言ってないんですけど、他のフランス歌曲に比べて「ちょっとダサいな」と思っていたことがあって。ただ、先生も同じような感覚だったっていうことで、「僕は悪趣味という意味で言ったんではない」ということを訳してきてて、「英語で言うならOld‐Fashionってことかな」みたいなことを言って。だから、私は古臭いと思っていたのかと。なんでダサいと思っていたのかが自分で分かってなかったんですけど(苦笑)でもやっぱり、そういう事もフランス語の方で先に出ちゃったけど、直訳の通りの意味で先生も使っていたわけではないので、そうやって「英語の意味の方が近いかな」とか言って、「Old‐Fashionだなって意味で、思わずキッチュと言ってしまっただけだから」と言って笑ってらっしゃいました。「そうなんだ」「それなら分かる」「同じ感覚だから」とか。
-面白いですね、ある言葉では表現できるけど、出来ない言葉もあるとかいうことですよね?
平井裕子 そうなんです。
-先生は初めて見られる曲でも、全然大丈夫なんですか?
平井裕子 はい、もちろん。全然弾けますね。ただ、レッスンの時は歌わせようとするので、基本PとかPPという指示があっても大きく弾きますけどね。
実際、先生ともう1人の女性のピアニストと、私は背中を向けているわけですけど、「2人とも、日本人のピアニストとは全然感覚が違うな」と思いましたね。これはいつも先生にも凄くすごく言われるんですけど、とにかくフランス人は「音楽を流し流して」「音楽を進めて進めて」って言うんですね。それってフランス語を勉強し出して分かったんですけど、英語とかって割とこういう上がって下がってみたいなイントネーションの抑揚があるじゃないですか。フランス語ってそういった抑揚がなくて、新作音楽劇の作台本読みとかでも凄くしごかれているんですけど。発音はいいんだけど、英語訛りのフランス語みたいになっちゃってて。カクカクしちゃうみたいなんですよね。多分、私の音楽もきっとそういう所があって、凄くそれを注意されてて、「レガートにレガートに」って言われるんです。日本人だと歌もそうなっちゃうけど、ピアノもやっぱりテクニックもいるからということで、日本人だと結構カツカツしっかり弾いちゃうみたいな感じで、背中を当てていると、どんなに上手い人でもちょっとなんかゴツゴツしたものを後ろから感じるんですけど。フランス人が弾くピアノには、それが全然ないですね。「言葉と一緒だなあ」と。どこまでもフラット。だから、引っ張ってくれるとかじゃなくて、ピターっとくっ付いてくるんですけど、あまりに自然すぎてちょっとビックリしちゃうんです。それであっとう間に歌わされて終わってる。面白いですよね。
-10月と12月にコンサートに出演されるということで、今後もご活躍を期待しております。