-まずは自己紹介も兼ねて、今までの音楽歴を教えていただけますか?
眞田 母がピアノをやっていたこともあって、生まれた年に買ったピアノがありました。気がついたらピアノを弾いていたような感じで、中学生のころに音楽の道に進むことを考え始めました。そのまま高校、大学と進んで今に至るという感じです。いま大学3年生です。
-これまでに海外の先生のレッスンを受けたことはありましたか?
眞田 日本では音楽祭に参加した際に、カールスルーエ音楽大学の韓国の先生のレッスンを受けました。中学生の時にはコンクールの賞で、高校の時には研修旅行でウィーンやザルツブルク、ドイツでのレッスンを受けています。
-ということは、ドイツ語圏の国にも結構慣れていらっしゃるわけですね。
眞田 そうですね。ザルツブルクも今回で2回目です。行くたびにどちらかというと、なつかしいな~という感覚になりますね。
-講習会へのご参加というのは今回が初めてだと思いますが、それまでの海外でのレッスンとはなにか違いましたか?
眞田 あまり違いはなかったです。今までのものは、10日間が一番長い期間でしたので、今回は2週間だったということもありレッスン回数が多かったという点くらいです。
-講習会にご参加なさった目的は将来のご留学に向けての下見でしたか?
眞田 下見の意味もありました。将来的に長期留学をしたいと思っていて、学校はモーツァルテウムがいいかなと思っていたんです。なので、この講習会に参加して師事する先生を探すという目的もありましたし、あとはこの講習会にはモーツァルテウム以外の学校の先生もいらっしゃってますよね。そういう先生のレッスンも見て、その先生の所属する学校も留学先として考えるのもいいかなと思ったんです。
-いろいろな調査ともなっていたわけですね。
眞田 はい。実際に他の先生のクラスに参加している方々の演奏会をきいてみたり、先生によってはリサイタルがある先生もいらっしゃったので、そういったものもききに行きました。
-調査結果はいかがでしたか?
眞田 気になる先生が何人か見つかりました。実際にお話をしたりしたわけではないので、今後またゆっくり考えていこうと思っています。
-今回実際レッスンを受けたウェーバー先生はいかがでしたか?
眞田 とてもていねいにみて下さる先生でした。それぞれの人にあったレッスンをして下さいます。ほめてのばすタイプの先生で、お人柄はとても穏やかでした。
-得ることも多かったですか?
眞田 そうですね。私は他の人とは違った演奏をしたいと思ってしまうタイプなので、そういうところものばしてもらえるレッスンでした。日本ではどうかなと思う感じでしたが(笑)。
-日本では受け入れられなそうということですか?
眞田 受け入れられないかはわからないのですが、日本だと割と正統派の演奏をしなければいけないという考えが主流なんですね。それが、ウェーバー先生のレッスンでは、個性的で毒々しい感じの演奏にもっていっていただいたりしたので、コンクールだと落とされちゃうな、という演奏になっていると思います。
-是非一度きかせていただきたいですね。日本で師事している先生には、そういう演奏を怒られたりはしないんですか?
眞田 先生は、私がどうしたいのかということをくみ取ってレッスンをして下さっているので、怒られるということはないですね。常に個性的な演奏をしてると思います。強弱でも普通とは逆にしてみたりとか。
-なるほど。そういう部分でも特にウェーバー先生のレッスンは、スタイルに合っていたということなんですね。他の生徒さんたちはどうでしたか?
眞田 ウェーバー先生のクラスには、中国からの生徒さんが多かったのですが、その中でひとりとても個性的な演奏をしている人もいました。私と同じくらいの年で、ほんとに感動してしまうくらいの演奏をしている人がいて、あんな風に弾けたらいいなと思ったりもしました。
-他の生徒さんからの刺激を受けることも多かったんですね。レッスンはたくさんありましたか?
眞田 2週間で6回です。クラスの人数が21人だったので、先生は休憩無しで朝から夕方までぶっ通しでレッスンをなさっていました。
-レッスン時間は1回1時間ですか?
眞田 1回45~50分くらいでした。長引いたりすることもほとんどなく、スケジュールどおりに進んでいました。
-聴講もたくさんできましたか?
眞田 他の先生のクラスのレッスンをききにいったりもしました。同じクラスの聴講は、最初の日のオーディションで聴いたなかで上手だなと思った人や、興味を持った人のレッスンを聴講しました。
-1日のスケジュールはどういう感じでしたか?
眞田 まず毎日9時~11時までと16時~17時までは練習室を予約していたので、その時間は練習をして日中はレッスンや聴講、学校の付近の散策などをしました。夕方からはコンサートに行ったり、練習室があいていれば使っていいということだったので練習したりしました。あとは、帰りにスーパーでお買い物をして寮に帰ってお料理をしたりしてました。
-結構自炊はしましたか?
眞田 はい。最初のうちは夜ご飯を外で食べてたりしてたんですが、ちゃんとレストランで食事をすると案外高いんですよね。18~20ユーロくらいするし、それにチップも足してと考えると高くつくので寮で自炊をしていました。
-他にも寮に住んでいる人たちは自炊をしてましたか?
眞田 夕飯時になるとみんな料理を始めて、いいにおいがしてくるんですよね。私のお部屋はちょうどキッチンがあるところの向かい側だったので、お部屋の中までいいにおいがしてきて。そのにおいがすると、そろそろご飯作らなきゃなーと思ったりしてました。
-どんなものを作りましたか?
眞田 ご飯を炊いたりしました。電熱のコンロにお鍋をかけて炊いていたんですが、炊きあがるまでお部屋で待っていようと戻っているところで、火災報知器が鳴り出して・・・。もしやと思ってお鍋を見に行ったら、底のところがこげて煙が出てました。
-大丈夫だったんですか?
眞田 すぐにレセプションの人がとんできました。セコムのようなところにも知らせがいってしまったみたいで、それはレセプションの人が電話をして説明してくれたので大丈夫だったのですが、建物全体で警報が鳴ったらしくびっくりしました。
-電熱のコンロって温度調節が難しいですからね。
眞田 以前に同じ寮に泊まっていた友人がいて、その友人から温度調節きかないよという話はきいていたのですが、まさかあそこまできかないとは思ってなかったですね。
-大事にいたらなくてよかったです。キッチンのつくりはどんな感じでしたか?
眞田 キッチンゾーンみたいなところがあって、そこにキッチンセットが並んでいます。スポーツジムのロッカーのような感じで、それぞれ鍵をあけて扉をあけるとキッチンになっています。最初は何をするところなんだろう?と不思議に思いました。冷蔵庫もそこにあるので、飲み物を取りに行くだけでもいちいち部屋の外に出なければ行けないのが、少し不便でした。
-寮のタイプはいろいろありましたか?
眞田 はい。私がいたところはオレンジの建物だったんですが、他にも黄色や青や緑などあって、同じ住所ですが番地が違っていました。黄色の寮ではお部屋の中にキッチンがついていたそうです。
-お友達もできましたか?
眞田 もともと日本で知っていて、という人はいなかったのですが、講習会に参加している日本人の人たちと現地で仲良くなりました。ミュンヘンに遊びにも行きました。
-ミュンヘンとザルツブルクは違いがありましたか?
眞田 そうですね。第一印象としては、建物の屋根瓦の色が違うなと思いました。ザルツブルクは田舎ですが、ミュンヘンはそれよりは都会な感じで、イメージで言うとザルツブルクが名古屋で、ミュンヘンは東京のすごく都心ではないけれども少しだけはずれたくらいの東京のどこかという感じでした。あとは、ザルツブルクではこちらから話しかけると答えてくれる人がほとんどだったのですが、ミュンヘンでは向こうから話しかけてくる人が多かったのも大きな違いでした。
-ドイツ語での会話をする場面もたくさんありましたか?
眞田 はい。ザルツブルクではバスや路面電車などけっこう複雑で、行きたい場所に本当に行くのかわからなくていろんな人にきいたりしました。スーパーでも欲しいものが売っている場所をきいたり、レストランでの支払いをするときなど、日常的な会話はたくさんしたと思います。
-問題なく通じましたか?
眞田 大丈夫でした。日本でもゲーテに通っていてドイツ語の授業は受けているので、単語や文法などはもともと勉強しているのですが、会話はなかなかできないのでいい経験になりました。ザルツブルクの人はなまりがあるので、アクセントの場所が違っていたりなど通じにくい部分はありましたね。
-講習会ではドイツ語のコースも受講なさったんですよね。クラス分けテストも事前に受けていらっしゃいましたね。
眞田 はい。でも、実際に現地に行ったら好きなクラスを受けていいことになっていました。初心者でも上級クラスに入ってもいいということでした。
-それはそれで大変そうですね。どのクラスをご参加なさいましたか?
眞田 私はレッスンのスケジュールなどもあって、参加できるクラスがひとつしかなかったので選べませんでした。初級の上のクラスです。
-そのクラスには何人くらい参加者がいましたか?
眞田 10人くらいだと思います。みんなレッスンの時間もあるので、みんなが毎日きているというわけではありませんでした。私もドイツ語のクラスが終わったらすぐレッスン、ということも多く、クラスの人たちとそこそこ会話もしましたが、それ以上仲良くなったりという時間もありませんでしたね。
-とてもハードなスケジュールだったようですが、困ったことなどはありませんでしたか?
眞田 特になかったです。警報機ならしちゃったくらいで。強いて言うならば、寮の夜の鍵当番の方がドイツ語しかできなかったのが不便そうだなとは感じました。「私は英語できません」ということもドイツ語で言うので、英語しかできなかったら大変だっただろうなと思いました。
-やはり現地の言葉は大事ですね。
眞田 そうですね。講習会のような短期間のものに参加する場合でも、やはり語学は勉強しておいたほうがいいと思います。
-眞田さんのようにドイツ語がある程度おできになっても、それ以上に必要だなと思われましたか?
眞田 もちろんです。日常会話は問題がなくても、レッスンの際などもっと理解できればよかったと思う面もたくさんありました。今後も続けてドイツ語は頑張っていきます。
-他に留学に際しての大事な点がありますか?
眞田 語学以外だと、現地に行ったら慣れること、ですね。もちろん海外だと日本と違うことがたくさんありますし、そういったことをいちいち気にしていたらきりがないんです。なので、現地で起こるいろんなことに慣れるのが大事だと思います。
-なるほど。なので、困った点としてあげていただくことがなかったのかもしれませんね。
今回、講習会にご参加なさって、そういう点も含めご成長なさったなと感じることがありましたか?眞田 海外に行くたびに毎回感じてます。いつも行くたびに現地の『空気』を感じます。昔の作曲家が住んでいた場所や生活していた空気、そういうものに触れると彼らが何を感じながら作曲していたのかなということにも思いがおよびますし、そういう『空気』は日本で感じることのできないものなんです。その『空気』を感じることができるのが、留学して一番良い点だと思います。
-では、やはり今後も海外への長期留学への思いが強くなりましたか?
眞田 そうですね。ただ、順番としてどうしようかなということを悩んではいます。大学を卒業してすぐに留学するのか、大学院まで卒業してから留学するのか、じっくり考えてみようと思っています。
-大学をご卒業なさってからだとまだ少しお時間もありますので、納得のいくご留学に向けていろいろとお考えになって下さいね。今日はありがとうございました。
-----------演奏会情報---------------
「大阪府立夕陽丘高校62期生、音楽科13期生による演奏会 The Curtain Call vol.4〜音の花束〜」3月28日(金)
開演 17:30 (開場 17:00)
阿倍野区民センター小ホール
入場無料
夕陽丘を巣立って早4年を迎え、仲間たちの多くは、また新たなステージへと進む年となりました。それぞれが違った環境下にいても、演奏会のためにみんなが集まって一つになれる様子を、色や種類の違う花が合わさってできる花束に例えて、今回のテーマを「音の花束」と題してお届けしたいと思っております。一人一人が心を込めてそれぞれの花を咲かせられるよう精一杯演奏いたしますので、ご来聴いただけたら幸いです。
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