花岡伸子さん/チェロ/英国フィルハーモニック管弦楽団/イギリス・ロンドン

花岡伸子さん/チェロ/英国フィルハーモニック管弦楽団/イギリス・ロンドン

「音楽家に聴く」というコーナーは、普段舞台の上で音楽を奏でているプロの皆さんに舞台を下りて言葉で語ってもらうコーナーです。今回英国ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団でご活躍中の花岡伸子(ハナオカシンコ)さんをゲストにインタビューさせていただきます。「音楽留学」をテーマにお話しを伺ってみたいと思います。
(インタビュー:2009年12月)

ー花岡伸子さんプロフィールー
1971年生まれ。8才より中島隆久、藤原真理、山崎伸子の各氏に手ほどきを受ける。桐朋女子高等学校音楽科卒業後、同ディプロマコースを経て、アメリカに留学。岩崎洸氏に指導を受ける。1994年、伝説のチェリスト、ジャクリーヌ・デュプレを育てたウイリアム・プリース氏に招かれ、英国ロイヤル・カレッジに入学。同氏のほかスティーブン・イッサーリス、コリン・カー氏らに師事。ロイヤル・アカデミー音楽院大学院を首席で修了後BBCヤング・アーティストシリーズ、スピタフィールド国際音楽祭などに出演、スペンサー伯爵邸でのダイアナ妃メモリアル・コンサート、ヴィクトリア&アルバート美術館での天皇・皇后両陛下訪英記念晩餐会での演奏などがある。また、トーマス・ツェトマイヤー音楽監督率いるノーザン・シンフォニアのゲスト首席チェリストとして演奏し、絶賛を博す。日本人初の英国ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団員として活動するなど、現在ロンドンを拠点に、様々な音楽シーンで幅広く活躍している。

-まずは、簡単なご経歴をお願いします。

花岡  8歳でチェロを始めて、桐朋学園の「子供のための音楽教室」に通いました。そして、桐朋女子高等学校音楽科を経て、桐朋のソリストディプロマコースに進学。その後、イリノイ州立大学、英国王立音楽院に留学しまして、現在は、ロイヤルフィルで活動しています。
-いろんな学校に通ってらっしゃったんですね。チェロを勉強したいという気持ちが強かったんですか?

花岡  音楽の勉強というのは、だいたい先生を頼っていくので、自分が習いたい先生がいるところに行くっていうのが普通なんですよ。そうなると、どんどんこうやって進んでいく形になっちゃうんですよね。イリノイに行ったときも、日本人の先生だったんですが、その方が州立大学にいらしたので、そこに行ったというだけです。その後、英国に関しては、ロータリー奨学金というのをいただいたので、それの関係で英国に行くっていうのは決まっていたんですけど。
-ロータリーって取るのがすごく難しい奨学金ですよね!優秀でいらしたんですね。

花岡  ラッキーだったんですよ。
-花岡さんがチェロを始めたきっかけを教えてください。

花岡  姉がバイオリンを習っていまして、最初は、私もなんとなくバイオリンを始めました。その後、姉妹一緒というのもつまらないので、私はチェロに変えたという感じです。
-お姉様は、今もバイオリンを続けていらっしゃるんですか?

花岡  いえ。アート関係ですが、音楽とは関係ない仕事をしています。
-花岡さんが、チェロの魅力に目覚めたのは?

花岡  もう、成り行きというのでしょうか。それが自然な道だったというか、なるべくしてなったという感じでしたね、私の場合は。自分からどうしてもチェロをやりたい!という感じでもなかったので。
-生活の一部だったという感じですか?

花岡  そうですね、。それがそのままずっとここまで来た、という感じですね。
-チェロをやっていたから、クラシックに興味を持ったという感じですか?

花岡  うちは、小さいころテレビが無かったんですよ。あっても見させてもらえないという環境だったので。ですから、ポップスとか流行歌とかに疎かったんです。特に、両親がすごくクラシックが好きというわけではなかったんですけど、クラシックの方が他のジャンルの音楽より聞く機会が多かったんですね。
-当時は、どんな作曲家が好きだったんですか?

花岡  バッハが好きでしたね。あと、バロックやルネッサンス音楽とかがすごく好きでした。
-チェロの演奏家になろうと思い始めたのはいつ頃からですか?

花岡  プロを目指してっていうのは10歳くらいですかね。桐朋の「子供のための音楽教室」に通い始めた頃からでしょうか。桐朋の場合は、高校に入る前の段階からスペシャル教育が始まるんですよ。
-その時は、チェロの実技の他にも勉強することはあったんですか?

花岡  ソルフェージュや聴音などですね。これは、すごく勉強しなければいけませんでした。
-週一回のレッスンですか?

花岡  はい、毎週土曜日に桐朋の大学の校舎で行われていました。まず聴音やソルフェージュをやって、その後にオーケストラがありました。受験が近くなったら、プライベートに先生のところに行って、レッスンを受けましたね。実技ではなく、やはりソルフェージュや聴音の。
-受験対策のための塾通いという感覚ですね。

花岡  そうですね。それを経て桐朋の音楽高校に進んだんです。だいたい皆さんは、そのまま桐朋の大学に進むんですけど、私は、もうひとつのソリストディプロマコースという演奏家養成コースに進みました。その時には、すでにアメリカに行くということは決まっていたので、そこで1年過ごしてからアメリカに留学しました。
-漠然とでも、留学をしたいと思い始めたのは、いつくらいからだったんですか?

花岡  留学したいと思っていたわけではないんですけどね。高校2、3年のとき、桐朋のマスタークラスに、岩崎先生という方がいらしたんです。その時、「この先生につきたい!」と思いまして、そこで、アメリカに行きましょうということに決まったんです。でも、たぶん小さいころから漠然と、外国に行くのかなっていうのは、頭のどこかにあったんでしょうね。昔の日記に書いてあったのを見て、強く思っていたわけじゃなくても、自分の中で決まっていたというか、なんとなく口にしたことでも、後でそうなっていることってあるんだなって思いました。
-行きたい!と強く思っていたわけではなく・・ですか。

花岡  自分はこういう風になりたい!って言っていたわけじゃなくて、ぽろっと口にしたって感じですね。イギリスに行った頃に、ふと思い出したんですけど。小学校時代、友達同士で交換日記をやっていて、私そういうこと書いていたんですよ、そんなに知識もないのに、「何歳でイギリスに行って・・・、王立音楽院に行って・・・」って。チェロもそんなに熱心にやってた時期じゃないのに。そういうのもあるですね。
-なんだか運命的ですね。

花岡  結構、そういうのって皆さんにもあると思いますよ、。こんなことをやりたいなって漠然と思ってたことが、そういえばその通りになっているって。
-あったかな、私?(笑) では、アメリカへは先生に出会ったことがきっかけで行かれたんですね。

花岡  たまたま、アメリカに習いたい先生がいたからという理由ですね。その後、イギリスに行くと決まったのも、奨学金制度の規定によるものですし。ロータリー奨学金制度の場合は、留学先の言葉ができていないと奨学金が下りないんです。私は英語しか話せませんでしたから、ヨーロッパに行きたいならイギリスしかなかったわけです。フランスに興味はあったんですけど、フランス語は話せませんでしたからね。なので、私の場合は、強く望んでそこに行ったというわけではなく、最終的にそうなっていたという感じです。
-そういうきっかけだったんですね。では、イギリスに長くいることになった理由はなんでしょうか。

花岡  イギリスでは、特別先生に恵まれたというわけではなかったんですけど、居心地が良いんですよ。言葉だけではなく、イギリスの雰囲気や生活、ロンドンの街、音楽に対するみんなの姿勢っていうのが、居心地が良いというか。これも成り行きですよ(笑)。
-運命付けられているような感じもしますけどね。流れに逆らわずに行くというのも方法なんですね。

花岡  それも人それぞれだし、その人の選択ですからね。
-イギリスとアメリカで音楽を勉強することについてお伺いします。まずは、アメリカでクラシックを勉強するにあたっての、長所と短所を教えてください。

花岡  私が行ったのは、アメリカといっても、ニューヨークなどの都市ではなく、イリノイ州という田舎だったんです。なので、アメリカ全体の音楽のことはわからないし、19歳からの2年間だけだったので、音楽業界に詳しいわけではないのですが・・・。でも、アメリカはやっぱりアメリカかなっていう感じですね。クラシック音楽というのは、ヨーロッパの音楽だから、アメリカにとってもクラシック音楽というのは、外国の音楽なんですよ。アメリカ人がプロデュースするクラシック音楽は、ヨーロッパ人のするそれとは全く違います。音楽の種類が全然違うんですよ。日本のクラシックも違うと思いますけどね。ただ、アメリカで勉強する子たちは、いわゆるスターダムに上る、大きな通過点として考えていますから、層は厚いですよね。
-お国柄が音楽の違いにも表れるんでしょうか。

花岡  アメリカはヨーロッパではないですからね。欧米ってひとくくりにしますが、アメリカはアメリカです。これから行かれる人も、どっちが肌にしっくりくるかだと思うし、何をやりたいのかにもよって違うと思います。テクニックをとことん勉強したいっていうのであれば、アメリカも向いていると思うし、そうではないもっと根底にある、香りや血のようなものを感じたいなら、アメリカに行ってもそれはない、ということですね。
-英語圏ということで、イギリスとアメリカをセットで考える方も多いですけど、全く別物ですよね。

花岡  そうですね、でも、イギリスも特殊なんですよ。島国ですから、他のヨーロッパ大陸の国々と比べると、またちょっと違うんです。イギリスはイギリスなんですよ。もっともっとヨーロッパらしいっていうか、音楽というものを本当の意味で体感したいなら、ヨーロッパ大陸に行ったほうがいいと思います。ドイツやオーストリアなどに。楽器によっては、フランスもいいかもしれないですね。
-なるほど。では、イギリスでクラシックを学ぶ長所と短所を教えてください。

花岡  イギリスは、何でもある程度、適当っぽくて自由です。ただ、その分、教育メソッドがしっかりしていないというのはあります。フランスやロシアなどは、すごく教育メソッドがしっかりしているんですよね。それをAtoZで、最初から最後までやると、ある程度のところまでいけますっていう保障がありますが、イギリスはそういうのはないです。先生も系統立てて教えてくれませんし。本当に才能がある人は、たまにポーンと出てくることはあっても、教育によって出てくることはほとんどないです。
-すごく勉強になりました。イギリスは教育もしっかりしていると思っていました。

花岡  しっかりしてないですよ、音楽に関しては。こんなことを言うのもなんですけど、音楽的に素晴らしい国かというと、いろんな意味で、そうは言いがたいですね。それに、音楽をやっている人に対して、国からサポートがあるかと言えば、すごく少ないですし。ということは、外国人アーティストやミュージシャンにとっては、生き難い街と言えますね。私は縁あってここにいますけど、音楽を離れたところで、国の雰囲気が肌に合うとか、そういう部分ですよね。
-けっこう現実は厳しいんですね。

花岡  行ってみないと分からないこともありますね。イギリスに夢を持って来ても、生活の面で不便だったりすると、うーん・・・って思うこともあるだろうし、決める前に講習会などに行ってみたりするのも、ひとつの手だと思いますよ。
-それで、合う合わないは、何となくわかりますものね。ちなみに花岡さんは、行かれたんですか?

花岡  行きました、っていうよりも、ロンドンっていうのは決まっていたんですけどね。先生や学校を決めるために一回行きました。その時に、好きだなって思いましたね。リージェントストリートとか歩いて、「ああ、いい感じ!」って、心がワクワクしました。それも大事な要素ですよね。
-たとえば、アメリカに行きたいから、とりあえず行くっていうのは、少し危険な面もあるのでしょうか。

花岡  一回行ってみるのもいいでしょうけど。イギリスとアメリカで迷っているんだったら一回行ってみたらいいと思います、全然違うから。アメリカに行くって決めてるなら、それでいいと思いますけど。
-音楽的に魅力があっても、ドイツという国が合わない人もいるでしょうからね。

花岡  それ、わたしですね。ドイツなんて絶対ヤダって思うから(笑)。音楽的に素晴らしいのは分かっているんですけど、もう少しパーっとしたところがないとイヤなんですよね。これは、性格でしょうね。ドイツはすべてが田舎で小さいし、ダサめだし(笑)。人それぞれですけど、私は、もうちょっと都会的な場所が好きなので(笑)。
-人にそれぞれ合う合わないはあるので、一概にどこが良いとは言えないですもんね。

花岡  行ってみて失敗するのも、ひとつの経験だと思いますよ、若い人は特に。そのうち流れ着きますから、自分のベストな場所に。
-アメリカ、イギリス両国に留学を経験されて、最も留学に重要とされるものは何だと思いますか?

花岡  やはり、語学は必要だと思います。でもそれに関しては、行ってからでも社交性があれば大丈夫だとは思いますけどね。出来るようになるものだから。私も、アメリカに行ったときは、「How are you?」も言えないくらいでしたからね。準備なんかしていくタイプじゃないし、出たとこ勝負みたいな感じでした。わたしも社交的なタイプではなかったですけど、コミュニケーションは1対1でも取れるものだから、そういう意味で、人と関わるのがイヤでなければ上達していくものですよ。
-レッスンの時はどうされていたんですか?

花岡  一番最初は日本人の先生でしたから。でも、レッスンは意外と分かるんじゃないかな、と思います。弾いて見せてもらえたりするわけだから。あと大事なことと言えば、柔軟性かな。柔軟性と楽天的な考え方(笑)。それは留学とは関係なく、なんでもそうだとは思いますけど。
-それが顕著に出るのがやっぱり留学なんでしょうね。ある程度は流れの中でやっていくっていうのも大事なのかもしれないですね。花岡さんは、イリノイに行ったときは、英語の学校に通ったりしたのですか?

花岡  行きましたよ、海外留学生のための語学学校を大学が設けていまして。アメリカはTOEFLのスコアがないと大学に入れないじゃないですか。私はそんなの用意してないし、点も低かったので、最初の半年はそこに通っていました。大学の寮には住んでいましたし、レッスンは受けてましたけど。
-英語のスコアをとった後に、入学になるんですね。

花岡  生活は、大して変わりませんでしたけどね。
-音楽科目以外のことは勉強されたんですか?

花岡  はい。一応普通の大学でしたから。その頃は、全然語学が出来ていなかったから、なるべく言葉が必要ないクラスを取っていました(笑)。それに、そこには2年くらいしかいるつもりはなかったし、卒業するつもりもなかったから。レッスンが受けられれば良いという感じだったので。
-ある程度は、語学はできていたほうがいいのですね。

花岡  あと語学じゃなくてコミュニケーションスキルがあるというのは大事です。人との関わり方ですね、特にアメリカでは。
-やはり話さないとだめですか?

花岡  言語を通さないと最初のコミュニケーションはできませんからね。人と人とがコミュニケーションをするっていうことが出来ないと、誤解が生じたり上手くいかないことが出てきます。語学が出来てなくても、コミュニケーションをとろうという、基本的なマナーや姿勢があれば絶対伝わりますし。それが日本語でも出来ないような人っていうのは、語学とは別に問題が出てくると思います。
-日本で出来なかったら、外国語ではできませんよね。

花岡  生活面でも、大家さんとのやり取りとかがうまくいかなかったり、そういうのは語学の問題だけでなく、コミュニケーションスキルの問題。結局仕事だってコミュニケーションに左右されますから。
-どんな仕事をしているにしても大事なことですもんね。今、イギリスでお仕事する上で、日本人が有利な点や逆に不利な点はありますか?

花岡  有利な点は特にない!(笑) 不利な点はビザ!イギリスでビザを取るのは非常に難しいんです。最近は、少し変わってきて、オーケストラの仕事でも、ビザを取れる枠っていうのが出来たみたいですけど。だから、アジア人や外国人が、イギリスのオーケストラにいないっていうのはそういう理由です。帰らざるを得ないんですよ。
-そういう意味で、音楽を学ぶ人には優しくない環境なんですね。

花岡  それも含めて、ですね。大きな意味でいうと、アートに関して、国がそんなにお金を出さないんですよね。ということは、アーティストは非常に苦労するんですよ。アートってサポートがなければ成り立ちにくいんです。ビジネスなんですけど、他のビジネスとは違いますからね。
-ドイツなどでは、割とサポートされていますものね。

花岡  アーティストが労働条件の面などで守られているんですよね。そういうのが、イギリスは全くないですね。
-そう考えていくと、合う人は合うでしょうけど・・・という感じでしょうかね。

花岡  確かに魅力的な街ではあるから、金融も文化的にもいろんな物が集まってきていますし。
-今、オーケストラに日本人は花岡さんだけですか?

花岡  私が8年前に入った時は、ロイヤルフィルは私が初めての日本人でした。最近2人入りましたけど。すごく最近の話ですね。
-基本的には、イギリス人の割合が多いんですね。

花岡  9割方イギリス人です。音楽家の人たちが、外国人は入れたくないと言っているわけじゃなくて、国のシステムがそうだから入れないんですよね。高いハードルですね、ビザ取得は。大変なことなんです。
-イギリスでプロの音楽家として活躍する秘訣や、成功の条件はありますか?

花岡  私は、オーケストラという世界で今のところ生きているので、そこに限って言うと、ある程度の器用さは必要だと思います。なぜかと言うと、すごく仕事のスケジュールが厳しいんですよ。まったくリハの時間がなかったりとか、毎日毎日違うプログラムのコンサートをこなしていかなきゃいけないっていう状態。なので、しっかり練習してからでないと弾けないっていうタイプの人は難しいです。ある程度パッと見てパッと出来るような、器用さと集中力が大切なんです。あとは、パッと出て行ける度胸。
-日本人には、不得意な部分かもしれないですね。

花岡  イギリス人は意外と日本人っぽいっていうか、そこまで個人主義じゃなく、グループメンタリティも持っています。フランス人のように、みんながみんなが個人主義というわけではないので、それを無理なく築いていけるような、センシティビティとインディビジュアリティの両方を持っていることが大事ですね。かといって、日本人ほどは、繊細な神経は持ち合わせていませんので、あまり神経質になるとつぶれてしまいます。そういうバランス感覚は大事ですね。
-複雑ですね。

花岡  意外と複雑だし、複雑そうに見えて単純だし。
-日本人は迷ったりするかも知れませんね。

花岡  ある程度、お気楽な気持ちを持っていることも大事ですよね。イギリスはそういう人も多いので。
-やっぱり、いろんな意味でその国の状況に順応できないといけないですね。

花岡  それは向き不向きだったりしますね。おのずと自分の合ったところに流れ着いていくっていうのは、そういうことだと思います。合ってなければ流れ着きませんから。
-では、難しい質問になるかと思いますが、花岡さんにとってクラシック音楽とは何ですか?

花岡  クラシック音楽は難しいですよね。様式や理論の枠が、ものすごくキチンとあるものですから。それを超えたところにある、自由や美を表現出来たときに、揺るぎない感動とか大きい波が作れるものですね。ポップスやロックはノリで出来るものだけど、クラシックはノリだけでは無理ですからね。様式や理論がガッチリ出来たところで、ノリや自由っていうのが加えられると、いわゆる「マジカルモーメント」っていうのがクリエイトできます。そんじょそこらの人じゃ、たどり着けない世界ですけど。そこまで行きつくような才能がある人も少ないですし。
-なるほど。すごく説得力がありますね。さて、花岡さんの今後の音楽的な夢は何でしょうか。

花岡  結局、シンプルなところに行きつくんですが、私は、チェロが自由に弾ければ幸せだと思っているんです。それを聴きたいという人がいてくれて、それを表現する場所があれば、それでいいと思っています。一人でも聴きたいと言ってくれる人が多くなっていってくれればなと思います。自分の時間を使って来てくださるわけですから、その時間が価値のあるものだと思っていただけるような場を作って行きたいですね。私の音楽を通してそれが出来て、その場が増えていくことが理想ですね。
-そういう原点の部分を忘れないでいることは、素晴らしいですね。

花岡  素晴らしいかどうかは分かりませんが、それしか意味がないじゃないですか。そこが楽しいとこで、その中で「じゃあ具体的にどうやっていこう?」などは、もちろん一人のミュージシャンとして、色々頭の中にはありますよ。これをやってみたい、あれをやってみたいって。でも、結局は原点の上に成り立っているんですよ。
-では最後に、海外で勉強したいという方にアドバイスをお願いします。

花岡  海外に行きたいなら、行けばいいと思います。でも、場所はどこでもいいんですよ。結局は、自分の道を歩いていくことが大事で、それが海外なのか日本なのかは、おのずと決まってくることですから。やりたいことをやっていけばいいし、目の前にあることを頑張っていくことが大事なんです。やってみなきゃ分からないこともありますしね。留学してもイヤになって3ヶ月で帰ってくるかもしれないけど、それはそれで良し!その時その時で、一生懸命やっていれば、自分のデスティニーの方に行きますから、自分でも知らないうちに(笑)。
-素晴らしいメッセージをありがとうございます!今日はお忙しい中本当にありがとうございました。
 
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