「音楽家に聴く」というコーナーは、普段舞台の上で音楽を奏でているプロの皆さんに舞台を下りて言葉で語ってもらうコーナーです。今回はスイス、チューリッヒ国立高等音楽院で世界的名教師ザハール・ブロンのアシスタント兼講師/演奏家としてご活躍中のバイオリニスト坪井悠佳(ツボイユカ)さんをゲストにインタビューさせていただきます。「ヨーロッパで学ぶバイオリン」をテーマにお話しを伺ってみたいと思います。
(インタビュー:2005年9月)
ー坪井悠佳さんプロフィールー
坪井悠佳さん
東京生まれ。4歳よりヴァイオリンを始める。14才でイギリスのユフディ・メニューイン・スクールに留学。メニューインに認められメニューイン指揮フィルハーモニア・ハンガリカとモーツァルト協奏曲第三番を共演。メニューインの80歳記念コンサートやウィグモアホールでのコンサートに出演。メニューイン設立の慈善財団に所属し病院や施設などでコンサート活動を行っている。そのほかスイス、イタリア、スペイン、イスラエル、オーストリア、シンガポールなどで演奏会を行う。スペインのサラサーテ国際ヴァイオリンコンクール第二位、チューリッヒ、キヴァニス・コンクール・ヴァイオリン部門第一位、パドヴァ国際音楽コンクールソロ部門、室内楽部門共に優勝、ヤマハ奨学金、マイスター奨学金受賞など数々の国際的な賞を受賞。ロンドン王立音楽院を経て現在スイス、チューリッヒ国立高等音楽院で世界的名教師ザハール・ブロンに師事しアシスタントを務める。また弦楽四重奏GALATEA QUARTETを結成しヨーロッパ各地で出演予定。ウィーン・マスタークラスとモーツァルテウム夏期アカデミーで教える。現在最も優れたバイオリストであると同時に後進を育てる教育者でもある。
ー 坪井さんの経歴をごく簡単にご紹介していただけますか?
坪井 最初桐朋学園の子供のための音楽教室に行っていたんですね。それからイギリスのメニューインスクールというところへ14歳のときに行きました。それは全寮制の音楽学校でした。そのあとに卒業はしなかったんですけども、3年間英国王立音楽院に行きました。そして現在チューリッヒの国立音楽院でザハール・ブロン先生のアシスタントをしています。
ー ずいぶん早い時期から海外にでているのですが、何か興味を持ったきっかけがありましたか?
坪井 小学校卒業した時は日本にいたんですけど、そのあとシンガポールにうちの父が転勤になったんですね。それでシンガポールに中学校から2年間行っていたんです。小学校は桐朋だったもので、そのあと中学校に戻って桐朋の高校の音楽科を受ける予定だったんですが、外国にかなりちょっと興味を(笑)。
ー もうもっちゃったんですね(笑)。
坪井 はい。いろいろ知り合いの方に聞いてもらって、イギリスに全寮制の音楽学校(*注:メニューインスクール)があるというのでそこに行きました。
ー それは音楽をやりたかったんですか?
坪井 そうですね。私から行きたいと言いました。
ー 何かきっかけみたいなのはありましたか?
坪井 桐朋の高校の音楽科を受験するつもりだったので、夏期講習を受けに日本に帰ってきたんですね。そのときに昔ついていた先生にお願いしたんですけども、その方にずいぶん日本にいた時と変わっているし、もう帰ってくる必要ないわよって言われて(笑)。もう私が留学しているということは伝えてあったんですけれども、その学校を先生もご存知で、行ってみたらということになって、イギリスに行くことになりました。それで母がお友達でドイツに住んでいる方に聞いて手紙を書いたらオーディションに来ないかという返事が学校から来まして、すぐイギリスに行ったんです。
ー 音楽というといろいろジャンルがあって、通常、若い時期って、若い時期というか子供の時期って、結構ポップとかロックとかに惹かれていくと思うんですが、そうではなかったんですか?
坪井 そうですね。イギリスの学校は寮で、いつも部屋をシェアしていたんですね。同世代の女の子たちと一緒に生活していたんですけれども、その子の影響でラジオや今はやりの音楽は聞いていましたけど、クラシックが小さい時から自然なものになっていたのでそういうほうに興味がありました。もちろんポップスなど聞くのは楽しかったですけれども興味は湧かなかったですね。
ー ご両親は音楽家でした?
坪井 そうですね。うちの母は音楽学をやっていてピアノも弾いていたので小さい時は一緒に弾いていたりしました。
ー じゃ、本当に小さい頃から音楽が身近にあったのですね。
坪井 そうですね。割とそうかもしれない。うちの家族は音楽を聴くのは好きです。
ー 坪井さんはイギリスとスイス・チューリッヒの2ヶ国に留学されていますよね。実際に留学するにあたってそれぞれいい点と悪い点とあると思うんです。イギリスだったらこういう所とか、スイスだったらこういう所とか、そういう事があると思うんですけれども、それぞれ簡単にこういう所が良かったなとか、こういう所が悪かったなとかそういう所があったら教えていただいてよろしいですか?
坪井 メニューインスクールというのは全寮制の学校で、みんな一緒に生活するんですね。その中で普通の授業もありますし、大学などの機関もその中でやっていたのですけども、とても密度の高い留学生活というかみんないつも一緒にそこにいるので。
ー ずっと一緒ですもんね。
坪井 そうですね。だから普通、留学したらどこかに住んで大学に通うとかそういうことですよね。ここは全寮制なので本当に密度の高い、いつもなんというか音楽に触れているという感じですね。最初の頃は、本当に良かったなと思います。友達も音楽をやっているので。
ー もう音楽づけという感じですか。
坪井 づけですね。
ー そのあとに行かれたロンドン王立音楽院はどうでしたか?
坪井 ロンドン王立音楽院に行ったのは、先生についていった形でした。それ以外は、私はそこにあまりいい思い出はないのですけれども(笑)。メニューインスクールというのは本当田舎にあるんです。ロンドンから電車で3、40分行ったところなんですね。そこの駅からずいぶん遠いところで本当に田舎なんですね。王立音楽院というのは街の真中にあって、コンサートに行くにも美術館に行くにも何をするにも近いところでした。そういう意味ではカルチャー的にいい環境だったと思いますけれども、そこでは普通の音楽大学生活を送ったと思います。
ー メニューインスクールでは日本人はいらっしゃいましたか?
坪井 私が行った当時は全部で50人くらいの学校でした。8歳から18歳までの。日本人の方はあと3人くらいいました。
ー その方はどうやってこの学校を選んだりしたのですか?
坪井 大体親御さんが誰かを通じてこの学校を知ったという、そんな感じでしたね。
ー ロンドン王立音楽院は、いい思い出が無かったというのはあんまり学校に満足しなかったのですか?
坪井 そういうわけではないですけれども、留学期間が長くなってきて、このままイギリスにいるのか、それとも他の国に行くのかというのを迷った時期だったんですね。イギリスは、大体10年間いると労働許可を申請できるんです。5、6年いたところでこのままイギリスにいるか、また先生のことも悩んでいてもうちょっと違う先生にしたいなと考えていたんです。それでイギリスで探すのか、どこか違う国で探すのか迷っていた時期でした。
ー スイス・チューリッヒの学校が浮かんできたのはどうしてですか?
坪井 ドイツの夏期講習に一回行ったときに習いたい先生に会ったと感じました。その方が新しいクラスをチューリッヒの音楽院でするのでよかったら来ないかということで、そちらに行きました。私もあともう一年でロンドン王立音楽院を卒業ということだったんですけども(笑)。三年間行ったんですが、結局それも無視して(笑)。
ー もったいないといえばもったいないですよね。
坪井 そうですね。でもチューリッヒのほうで卒業できたらしたいなと思ったので。王立はやっぱりあんまり好きじゃなかったんでしょうね。それで教師の資格をとって、そのままチューリッヒに今もいます。去年の9月にやっとソリストディプロマをチューリッヒで取りました。その前の学歴は小卒だけだったんですよ (笑)。
ー 師事する先生を選ばれたのは、知っている先生がいて夏期講習を受けたのですか?
坪井 メニューインスクールで会った先生で、いい先生だなとその時も思っていました。王立に行くときについていった先生が、前にお世話になった、すごいいい先生だという話をしていてそれで夏期講習に行ってみようかなと思いました。
ー スイスを留学先とすることで何か重要なことはありますか?
坪井 先生をやっぱり見極めることが大事かな。私がチューリッヒで習った先生はもともとミュンヘンで教えていたらしいのです。本当に気に入って教えてくれるのならミュンヘンに行こうかなと思っていたんですけど、たまたまその先生がチューリッヒに行ったのです。夏期講習などを利用して先生と知り合うなり、友人を頼りにしてどういう人がいるのかを知るのが一番いいですね。
ー スイスには、日本人の方は結構いらっしゃいますか?
坪井 チューリッヒと隣のウィンタートゥーアという町があるんですね。そこの学校がオーケストラなどで一緒にプロジェクトをしたりします。チューリッヒには、日本人は20人くらいですね。結構チューリッヒに住んでない方もいらっしゃって、他の国から時々通っていらっしゃる方もいますし、ウィンタートゥーアのほうはちょっとよく分からないのですけど20人近くいるんじゃないですかね。
ー スイスいいですものね。
坪井 中都市なりにもいろいろな催し物があるのでその点はいいです。
ー ヨーロッパは音楽的に盛んな国、例えばウィーンやドイツなどがあると思うのですが、特にどこかの国でやれば良いとか、どこかの町でやったほうが音楽的に有利とか、そういうのはあるのですか?
坪井 もちろんウィーンなどは本当にいろいろコンサートもたくさんあり、代々音楽家が活躍した場で、もちろんそういうのに触れて音楽活動するというのは夢のようですね。ただ、留学にあたっては、私にとってはいい先生についてそこから音楽活動するという事が重要でした。そういう意味でオーストリアやドイツもちろん魅力的ですけれど、別に国や街はあまり関係なく、音楽的に密度の高い環境にいる事が重要だと思います。
ー 現在は、スイスが主なお仕事の場所でしょうか?
演奏中の坪井さん
坪井 それがまた元の話に戻るんですけれども、スイスへ師事したい先生についていたのですが、彼女が1年後に突然病気になってしまったんです。それで彼女についていた9人の学生もみんな路頭に迷っている感じになってしまいました。それでどうしようかウィーンに行こうか他の国にもあたってみようかと思っていた最中に、非常に有名な今の先生のザハールブロン先生がチューリッヒにいらっしゃることになったんですよ。
ー それはすごい。もちろん、今までザハールブロンはいなかったのですよね。
坪井 はい。彼はケルンとマドリッドの音楽院でずっと教えていたんですけども、結局友人の方の紹介で今度スイスにいらっしゃることになったということです。今までメニューインスクールにもいらしてたし、お友達も先生に付いていたので、先生のお話はもちろん聞いていました。ただ、有名な先生なので私にあうかかなり心配だったんです。ロシア流のなんとかとか、いろいろどうなるか心配だったんです。でも実際ついてみると、本当に基本を極めるじゃないですけど、音楽の原型を崩さずにどうやって教えるかというのを極めていらっしゃる先生だったのですごく良かったです。
ー じゃ本当に基本を忠実にして土台作りをしっかりしようという教え方なんですね。
坪井 そういう教え方ですね、基本的に。なんというかな、音楽のエッセンスをどうやって伝えるかという教え方だったので。もちろん自分の理論を押し付けるという面はまあちょっとありましたけれども(笑)。でも、それを自分で選択できるという形にはなっていたので、先生が言っていることでいいなと思っていることはやるし、別に必要ないと思ったことはあえてやらなかったし。
ー ディスカッションをしながらやっていく感じですね。
坪井 そうですね。先生も日本に何回も何回もいらした方だし、日本語もかなり達者なので。その中でいろいろ楽しみながらディスカッションという感じですね。それで現在は、先生のアシスタントなんですね。
ー 通常オーケストラや室内楽などもスイスで行っているのですよね?
坪井 私は弦楽四重奏をかなり積極的にやっていて、スイス人の方と結構頻繁にしています。
ー 留学をする方は、留学することが目的の一つであると思うのですが、その後に仕事をしたいと思う方は多いと思うのです。スイスで仕事をするにあたってどういうふうにすればプロとして活動できるのですか?
坪井 そうですね、私のカルテットの場合で言ったら結成した後すぐにコンクールを受けました。そういう機会を与えてくれるコンクールなどに入賞すると結構連絡があります。また、新聞に載るのでそれを見てもらうなどですね。でも、結構人づても多いですよね。もしかしたら大体人づてかもしれません(笑)。
ー やっぱり人なんでしょうか、一番は。
坪井 クラシックを好きな方は結婚式とかパーティーでクラッシック音楽をやってくれないかというのがあるのです。チェロの人が、そのような仕事をやっている仲間だったんですね。それが延長して、コンサートなどの連絡を受けて契約書作ってというようになっていきましたね。やっぱりスイスではかなり人づてが多いと思います。
ー スイスで仕事をするにあたって、日本人が有利な点もしくは不利な点はありますか?
坪井 日本人の方はだいたい時間に遅れてきたりするなどはまずありません。皆さん、一生懸命練習してくるので、変な演奏をしないというように信頼さていることもあります。演奏の面でなくても、まじめさという面で日本人というのはだいたい信頼されていますね。
ー 僕のイメージだとスイス人も含めてドイツ系というのは結構硬いですよね。それでも遅れてくるような人がいらっしゃるんですか?
坪井 スイス人は大体時間どおりに来ますね。スイス人は本当にそういう面ではきちっとしてます。でもその他の人種がねー(笑)
ー ラテン系ですか(笑)
坪井 そうですね。すごいですよ。人によるんでしょうけど(笑)。
ー 坪井さんはクラシック音楽を小さい頃からやってきたと思うのですが、そういう方にとってクラシック音楽ってなんでしょうか?
坪井 小さいときから慣れ親しんだのですが、クラシックはいろいろな事がまざって人が作り出したという感じがすごい好きですし、本当に出会ったことに感謝しています。
ー 少し話をもどさせていただくのですが、いろいろな国があってスイスを決めるという部分。先ほどウィーンなども引き合いに出しましたが、スイスを留学先に決めることで何か良かったと思うところはありますか?
坪井 学校からいろいろ頼まれたり、本当にいろんな事をさせてもらったのでそれはすごく良かったと思います。イギリスでは私はあんまり大学でそういうことをさせてもらったことはなかったので。メニューインスクールでは何でもやったんですけど、そういう面でも人づてというのはあるんでしょうけどね。
ー なるほど。
坪井 人を通して知り合ってそこからいろいろ始まるというのが。
ー あるということですね。ところで坪井さんの将来の夢を聞かせていただいてよろしいですか。
坪井 学校で先生のアシスタントという教えることを始めて、それが意外なことにすごく好きになっています。今はアシスタントなので、先生がいないときに補助をするという形です。自分がいろいろな方の役に立てるのは本当にうれしいと思っていますので、今後、自分でもこの部分を伸ばしていきたいと思っています。将来的にどこにいるにしても、今と同じように大学などで教えることを基本にやっていきたいと思っています。
ー 演奏活動をメインにするよりは、教えることをメインにしていくということですか?
坪井 両方ですね。でも教えることは本当に興味があります。二つの夏期講習会に先生と一緒に行ったのですね。そこでかなり興味も沸いたし、いろいろな人と知り合えるのは良かったです。
ー 先ほどから聞いていると人と知り合うことがお好きなようですね。どういう形であれいろいろな人と知り合っていくことで自分がどんどん面白くなっていくという事ですね。
坪井 そうですね。でも人と知り合うには、やっぱり語学力も必要ですね。最初にスイスに来た頃は知り合いも少なかったですし。
ー ドイツ語ですもんね。
坪井 ええ。だんだん慣れていって信頼を得るというか。信頼関係ですからね。
ー だいたいどのくらいかかりました。ずいぶん友達も多くなってきたなと思ったのは?
坪井 そうですね。最低2年ですね。
ー その位は必要ということですね。
坪井 スイス人は、イギリス人も同じところありますけど、最初はあまり信用しないですよね。遠めで見ていて、ああ、あいつは大丈夫だ、みたいになっていくと思います。そうやって試しているのでしょうね。多分。ラテン系の人だともうちょっと最初からフレンドリーだと思いますけど、ドイツ系の方はちょっとまあ離れて見ていますね。
ー 坪井さんにとって海外で、ヨーロッパというのですか、ミュージシャンで活躍する秘訣みたいなもの、成功する条件みたいなものはあるとお考えですか。日本人として。
坪井 海外ならもとの話になりますけど人と知り合うことですね。人脈を他の面でも広げていきたいのだったら本当にインターナショナルな環境に恐がらずにいることです。いろんな方と知り合うというのにはいろんなプロジェクトに参加するなり、面倒くさいことでも色々やってみて友達になって、その輪を広げていくとか。そういうことも大切だと思います。
ー やっぱり輪を広げていかないと物事って何も進まないですもんね。いろんなところから仕事も入ってこないだろうし、人間的にも大きくならないですよね。
坪井 電話番号回してもらうじゃないですけど、いろいろなところに可能性を広げていくとか、本当にそういうのがうまい方っていらっしゃるんですよね。でも押し付けているんじゃなくて、わきまえてちゃんとやっている方というのがいらっしゃって、見ていてすごいなと思います。まあ、あんまりやると….ですけど(笑)。でも面白いと思います。
ー 面白いですよね。どんどん人が広がっていくのって。スイスの場合でもイギリスの場合でも能動的でないと、自分のコネクションを広げられませんか?
坪井 それはそうですね。もちろんその場にいることも大切です。その場というのはいろんな事があると思うのですけど、コンクールなり、集まりなりそういうことに自分から働きかけていかないと、来てくれるわけでもないですからね。来てくれる場合もあるでしょうけど、いろんな方に話しかけたり、まめな方がかなりいいですね。
ー まめな方でないと結局いろんな人を知ることはできないですからね。最後に今後留学される方にアドバイスを頂いてよろしいですか?
坪井 とにかく自分ということをしっかり持って留学することが一番だと思います。いろいろな失敗をしても自分で選択したことだと思うと後悔しないと思うのですよね。何かやり遂げたときは自分でやったと思うと成長したなと感じるでしょうし。留学する時点になって友達などに頼る面があっても、それからは自分でやっていかなきゃいけないので、まず自分からというのが一番大切だと思います。
ー 分かりました。日本人は性格的に、消極的になりがちで、それが美徳になっています。坪井さんはスイスで教える側の立場に立って、そういうのが見えていると思うのですが、典型的に見て日本人はヨーロッパでは消極的な感じがしますか?
坪井 やっぱりそうですね。向こうの子達というのは本当に良く質問してきますし、そういう意味では違う性格だとは思います。しかし、それを無理に積極的にするように押し付けるようになっても日本人のいいところはいいところだと思います。そういうところが外国人の方達に気に入ってくれるかも知れないですしね。そういうものは結構大切にした方がいいと思います。でも、そればっかりだと何にも出来ないですけれども。控えめなところは控えめにして、それでも自分でちゃんとやっていくということでしょうね。
ー 今後の演奏会の情報を教えていただいてよろしいですか。
坪井 パドヴァというヴェネチアの近くの町でリサイタルがあります。(2005年)11月、12月は結構カルテットのコンサートがあります。一つがドイツのシュトゥットガルトです。来年の1月にはチャイコフスキーのヴァイオリンコンチェルトをアルメニアで弾きます。1月に施設のコンサート、2月、3月はピアノとデュオのリサイタル、4月はチューリッヒトーンハレで室内楽のコンサートがあります。
ー わかりました。本当に最後に留学する方にこれだけは言っておきたいなというところはありますか?
坪井 将来のビジョンって自分の中でいろいろ変わってくると思うんですけど、私なんかも全然変わってきちゃったんですね。でも細部は変わったけど大きいビジョンはあまり変わっていないように思います。そういうことを思い描くことも大事かと思います。例えば何年留学したいのか、日本かもしくは海外の活動を広めていくのか、演奏でやっていきたいのか教えるのかそれとも両方か。この二つでなくとも色々な可能性はあります。私がシンガポールにいたころは大きい夢だけを頭の中で描いていたような気がします。
ー ビジョンが大切ということですね。ありがとうございました。